法律は公布されてもすぐには動かない

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法律は公布されてもすぐには動かない 第1章

ニュースで「法律が成立した」「公布された」と聞こえると、その瞬間から全国で効力が走り始めたように感じやすい、という語感がある。制度の地図は、そうではない。聞こえた語と、効力が走る瞬間は、層そのものが違う。国会を通ったことと、官報に載って国民が知りうる状態に置かれたことと、条文の効力が発生することは、別々の階段だ。成立した、公布された、効力が始まった、は同じ瞬間を指さない。三つを一語に畳むと、見た目と動きがずれる。できた、と聞こえた瞬間と、動き出す瞬間は重ならない。法律は、官報に載っただけでは、まだ全国に効力が走るとは限らない。見た目の完成と、効力の始まりを、同じ時計で読まない。通ったことと、載ったことと、動き出したことは、三つの段だ。どれか一つで全部が終わったようには読まない。

公布とは、法令を官報に載せ、国民が知りうる状態に置くことだ。官報の発行に関する法律は、法律などの公布は官報をもって行う、と定める。施行とは、その法令の効力が発生し、適用が始まることだ。参議院法制局の整理でも、公布と施行は分けて読まれる。知らせることと、動き出すことは、同じ紙の上の出来事にも見えて、役割ははっきり分かれる。空いた時間を穴として煽る話ではない。準備や周知のための時間が置かれることがある、という枠だ。即日に施行する法律もある。緊急を要するときや、特別な準備を要しないときに、公布の日から施行する、と書くことがある。それでも、公布の語だけで効力まで済ませたことにはならない。知らせたことと、適用が始まったことを、分けて持つ。官報に載った日と、施行の日は、同じ日付とは限らない。ずれは制度の設計の側にある。

法律の施行について、別段の定めがなければ、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する、という原則がある。法の適用に関する通則法の本文の条文だ。多くの法律は、附則で施行の日を自ら書く。いまの官報は、サイトに載った電子データが正本になった。二十日の数え方、附則の書き換え、官報の場所の話は、あとの地図として残す。先に置くのは、公布だけではまだ動かない、という一段だけだ。細部の数え方と、附則の型と、正本の場所は、あとの地図へ回す。成立のニュースと、効力の始まりは、階段の数が違う。官報に載ったあと、施行の日が来るまで、条文はまだ動き出す前の場所にいる。天皇の国事行為として法律の公布がある、という位置もある。公布の段の入り口のひとつとして、位置だけを先に持つ。法律は公布されてもすぐには動かない。

参考:e-Gov法令検索「法の適用に関する通則法」/e-Gov法令検索「官報の発行に関する法律」/内閣府「官報について」/参議院法制局「法律の公布・施行に関する事件」

次の章:黙っていれば二十日を経てから動く

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