裁判員はくじで三度選ばれる 第6章
三度のくじをくぐった先は、希少だ。裁判所のQ&Aは、令和6年の選任人数を裁判員4957人、補充裁判員1688人と置く。これを前提にすると、全国で1年あたり全有権者の約15800人に1人、およそ0.01パーセントだ。章題の一万五千八百人に一人は、この公式の数字だ。名簿に載ることと、裁判員に選ばれることは、同じではない。一度目の名簿のくじ、二度目の事件のくじ、三度目の法廷前のくじ。三度の段をすべて通った人だけが、この希少さの側に立つ。封筒が来た人数と、法廷で6人に残った人数は、桁が違う。名簿に載るだけでも、まだ裁判員ではない。事件の呼出しを受けても、最終の6人ではない。約15800人に1人は、三度の奥の数字だ。希少さは、くじの回数ではなく、最後まで残った人数の側にある。
名簿の出入りも短い。選任手続期日に裁判所へ来た人は、辞退が認められた場合を除き、その年の名簿から外される。同じ年に別の事件の候補者として再び呼ばれることはない。辞退が認められた人は名簿に残り、その年の別事件で選ばれる余地はある。名簿は毎年作り直される。来た年と来なかった年は、同じ候補の地図ではない。一年で閉じる名簿と、事件ごとに動く呼出しが、重なっている。出頭した年は、名簿の側でも一度区切られる。旅費と日当があること、評議の秘密などの守秘があることは、公式が説明する。額や手順は裁判所のQ&Aに譲る。裁判員の職務で休むことと、不利益な扱いを禁じる線も、公式の範囲にある。休暇の取り方までは踏み込まない。
数字は年によって更新される。三度をくぐった先が希少だ、という骨格は変わらない。感覚では封筒が来た瞬間に「選ばれた」と感じやすい。制度の側は、名簿のくじ、事件のくじ、法廷前のくじのあとに、ようやく6人を置く。選任手続で最終のくじに残って、はじめて裁判員になる。約15800人に1人は、その奥の希少さだ。補充裁判員も同じ年の公式の人数に含まれる。裁判員と補充を合わせた側が、章題の一人だ。封筒の段階と、法廷の段階は、同じ出来事ではない。確率の数字は、その差を示す。名簿の段階で止まる人と、法廷まで残る人は、同じ年でも別の位置にいる。
裁判所から届く名簿記載通知は、裁判員の決定ではない。まだ裁判員ではない、と公式は置く。手紙は終わりではなく始まりであり、三度のくじの入口である。一度目で名簿に立ち、二度目で事件の候補者になり、三度目で法廷前の6人に残る。どれか一つが欠けても、裁判員にはならない。通知の封筒は最初の段に立った合図にすぎない。書名どおり、裁判員はくじで三度選ばれる。一万五千八百人に一人は、その三度の先にある。
参考:裁判所「裁判員制度Q&A」/裁判所「裁判員の選ばれ方」