裁判員はくじで三度選ばれる 第5章
三度のくじが引かれる舞台は、すべての刑事裁判ではない。対象は一定の重大な犯罪だ。裁判所のQ&Aは例として、殺人、強盗致死傷、現住建造物等放火を並べる。覚醒剤取締法違反のうち営利目的の密輸入や、危険運転致死も例に入る。舞台は地方裁判所の刑事事件だ。刑事の控訴・上告、民事、少年審判などは外れる。すべてに広げると国民の負担が大きくなるため、関心の高い重大な犯罪に限る、というのが公式の趣旨だ。舞台は狭い。三度のくじは、その狭い舞台の上だけで動く。地裁の第一審という枠と、重大犯罪という枠が、同時にかかる。どちらか一方だけでは、裁判員裁判にはならない。枠の外の事件では、三度のくじは始まらない。
制度が始まったのは平成21年5月21日だ。根拠は平成16年法律第63号、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律である。導入の年表は長く辿らない。日付と法律の番号があれば、始まりの位置は見える。陪審とも参審とも違う日本独自の制度だ、と公式は一行で整理する。事件ごとに選ばれ、裁判官と一緒に有罪か無罪か、有罪なら刑を決める。その骨格が、三度のくじの向こうにある。始まりの日付は、くじの三度が現実に動き始めた線でもある。平成16年に法律が生まれ、平成21年に運用が始まった。短い年表は、それで足りる。審議会から法案までの長い経緯は、ここでは追わない。
対象の列挙は、公式の例示の範囲にとどめる。個別の罪名の解説はここでは開かない。何が重大かの線引きは、法律と公式の例が示す。感覚では「刑事なら何でも」と読みやすい。制度の側は、地裁の第一審のうち、重大事件だけを舞台にしている。控訴や民事や少年は、別の手続の地図だ。封筒が来ても、その事件が対象外なら、裁判員裁判の話にはならない。対象の線が、三度のくじの前提だ。例に挙がる罪名は入口であり、罪名ごとの解説書ではない。関心の高い重大な犯罪、という公式の言葉が、外枠になる。
三度のくじは、この限られた舞台の上でしか動かない。名簿に載っても、対象事件がなければ事件ごとの呼出しは来ない。呼出しが来ても、対象外の事件の話ではない。重大事件に限る、という線が先にある。すべてではない、という事実が地図の外枠だ。三度の地図は広いように見えて、舞台そのものは狭い。あとの段で、三度をくぐった先の希少さを数字で開く。枠の外では、三度のくじは動かない。対象は限られている。刑事裁判の全部ではない事実だ。この段では、すべてではない、で足りる。
参考:裁判所「裁判員制度Q&A」/e-Gov「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」