裁判員はくじで三度選ばれる 第2章
一度目のくじのあとに来るのが、名簿記載通知だ。前年11月ころ、裁判員候補者名簿に載った人へ届く。裁判所の公式の言い方では、名簿の段階ではすぐ裁判所へ来る必要はない。封筒は心づもりのための事前の知らせであって、出頭の命令ではない。名簿に載ったことと、裁判所の建物へ入ることのあいだには、まだ距離がある。通知を受け取った瞬間に日程が決まるわけでもない。具体的な事件の候補者になるまでは、出頭日そのものが存在しない。手紙の向こうに、まだ二度目のくじが残っている。
名簿の有効期間は、通知が届いた翌年の1月1日から12月31日までだ。その1年のあいだに、具体的な事件のくじで選ばれなければ、裁判所へ行く必要はない。名簿は毎年作り直される。1年が過ぎれば、その年の候補者ではなくなる。ただし、翌年以降にくじで再び名簿に載る可能性はある。一度載ったからといって、毎年続くわけではない。呼ばれないまま年が変わることも、制度の設計どおりの結果である。名簿に名前がある期間と、法廷へ入る時期は、同じではない。通知の翌年2月ごろから、さらにその翌年2月ごろまでのあいだに出頭の見込みが置かれる、と公式は説明する。それでも、見込みは全員に来る約束ではない。名簿に載ることと、呼ばれることは、別の段だ。年が変われば名簿も新しく引かれる。
通知と一緒に届くのが調査票だ。就職禁止の職業に就いているか、1年を通じて辞退できる事由があるかなどを、あらかじめ尋ねる紙である。裁判員になれない人や、辞退が認められる人が、無用に裁判所へ来なくて済むようにする負担軽減の紙だ。質問に当てはまらない人は出さなくてよい、と案内される。返さなかったから処罰されることはない。事情のある人は返送に協力してほしい、という位置づけだ。辞退の申し出は、この調査票だけに限らない。事件ごとの質問票や、選任手続の当日にもできる。調査票は一覧の手順書ではなく、事前確認の入口である。事由の細目はここでは開かない。役割だけを押さえる。紙一枚で出頭を免れるためのものではない。事情の有無を先に聞き取る紙だ。
名簿に載っても、すぐには裁判所へ行かない。公式の一文が、すでにその事実を書いている。通知は一度目のくじのあとの手紙であり、二度目のくじはまだ引かれていない。封筒を開いても、出頭日は決まっていない。名簿の1年と、調査票の役割が分かると、手紙の意味が読み直せる。感覚では封筒が決定線に見える。制度の側は、名簿への記載と、事件ごとの呼出しを分けている。あとの段で、事件ごとのくじがどう引かれるかを開く。この段では、すぐには行かない、で足りる。すぐには行かない、という事実が、名簿の段の骨格だ。
参考:裁判所「裁判員の選ばれ方」/裁判所「名簿記載通知について」/裁判所「裁判員制度Q&A」