裁判員はくじで三度選ばれる

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裁判員はくじで三度選ばれる 第1章

裁判所から「裁判員候補者名簿への記載のお知らせ」が届く。名簿記載通知とも呼ばれる。翌年、裁判員になる可能性があることを先に伝えるための手紙だ。まだ裁判員に選ばれたわけではない、と裁判所のQ&Aははっきり書く。この段階ではすぐに裁判所へ来る必要もない。封筒が来た瞬間に「選ばれた」と感じやすいが、制度の側はそう読んでいない。手紙は決定ではなく、入口である。封筒の向こうに、まだ二つのくじが残っている。名簿に名前が載ったことと、法廷で審理に加わることは、別の出来事だ。候補者という言葉と、裁判員という言葉は、制度の中では同じではない。

選ばれ方の公式の流れでは、くじが三度ある。一度目は、衆議院議員の選挙権を持つ人の中から名簿を作る段だ。市区町村の選挙管理委員会がくじで選び、地方裁判所が翌年の裁判員候補者名簿を作る。名簿に載った人へ、前年11月ころ通知が届く。名簿は毎年作り直される。二度目は、具体的な事件が決まってから、その名簿の中からまたくじで、その事件の裁判員候補者を選ぶ段だ。呼出しを受ける前は、事件の候補者ではない。三度目は、選任手続期日に裁判所へ来た候補者の中から、最終的にくじで裁判員を決める段だ。事件ごとに裁判員は6人、必要なら補充裁判員も選任される。原則の合議体は、裁判員6人と裁判官3人だ。三度とも「くじ」だが、引く主体とタイミングが違う。一度目は名簿のためのくじ、二度目は事件のためのくじ、三度目は法廷の前のくじである。

一通の通知で全てが決まる、という読み方は地図に合わない。名簿に載っただけでは、まだ事件の候補者ではない。事件の候補者になって出頭しても、最終のくじで残らなければ裁判員にはならない。通知は三度のうちの最初の段に過ぎない。最初の段を最後の段と取り違えると、地図が崩れる。調査票の役割、呼出しの人数、対象になる事件の範囲、選ばれる確率などは、あとの段で開く。先に持つのは、くじが三度ある、という骨格だけだ。

感覚の側は、裁判所の封筒を一本の決定線として読む。制度の側は、候補者名簿への記載、事件ごとの呼出し、法廷前の最終選任、と段を分けている。同じ「くじ」でも、引かれる場所が違う。名簿の段階と、事件の段階と、選任手続の段階は、同じではない。選挙人名簿から候補者名簿へ、候補者名簿から事件の呼出しへ、呼出しから法廷の6人へ。三つの段はつながっているが、どれか一つが欠けても裁判員にはならない。通知の封筒は、その最初の段に立った合図にすぎない。三度のくじをくぐって、はじめて裁判員6人が決まる。書名どおり、裁判員はくじで三度選ばれる。手紙は終わりではなく始まりである。くじは一度ではない。三度ある。

参考:裁判所「裁判員の選ばれ方」/裁判所「裁判員制度Q&A」/裁判所「名簿記載通知について」

次の章:名簿に載ってもすぐには裁判所へ行かない

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