むかしむかし、ある森に、きつねとたぬきがいました。ふたりはなかよしでしたが、ある晩のこと、「ぼくのほうが、ずっとよく寝ぼけるぞ。」「いやいや、ぼくのほうが、もっとすごいぞ。」と言いあいになりました。そこで、あしたの朝、ふくろうに「おはよう」と声をかけてもらい、どちらが寝ぼけた返事をするか、くらべることにしました。
ひとつめの朝です。ふくろうが、ほう、ほう、とやってきて、きつねの耳もとで言いました。
「きつねくん、おはよう。」
するときつねは、まぶたをとろんとさせたまま、むくりと起きあがり、
「ふわあ、おはよう。いいにおいのおいなりさんだなあ。」
と言うなり、自分のしっぽを、はむはむ、はむはむ、かじりはじめました。
「それは、しっぽだよ。」
「むにゃ、あまくておいしい。」
*
ふたつめの朝です。ふくろうが、ほう、ほう、とやってきて、たぬきの耳もとで言いました。
「たぬきくん、おはよう。」
するとたぬきは、まぶたをとろんとさせたまま、ごろりと起きあがり、
「ふわあ、おはよう。今日もいい天気だなあ、ぽんぽこ。」
と言うなり、自分のおなかを、ぽん、ぽこ、ぽん、ぽこ、たいこのようにたたいて、森じゅうにひびかせました。
「それは、おなかだよ。」
「むにゃ、おまつりの日だなあ。」
*
みっつめの朝です。きつねもたぬきも、きょうこそ勝つぞと、まくらをぎゅっとだきしめて、ねむったふりをしていました。ふくろうは、ふわあ、とながいあくびをして、ふたりの間にちょこんと立ちました。
「ふたりとも、おはよう。」
きつねは、むにゃむにゃ言いながら、たぬきのしっぽをかじりました。たぬきは、ぽんぽこ言いながら、きつねのおなかをたたきました。
「いたいぞ、それはぼくのおなかだ。」
「からいぞ、それはぼくのしっぽだ。」
ふたりは目をぱちくりさせて、あれ、これはどっちの勝ちだろう、と、ふくろうを見あげました。
「うむ、勝ったのは……」
ふくろうは、おもおもしく羽をひろげました。ふたりは、ごくり、とつばをのみました。
「勝ったのは……ぐう。」
ふくろうは、立ったまま、ぐうぐう、すやすやと、ねむってしまいました。夜のふくろうは、朝になると、ねむくてたまらなかったのです。
きつねとたぬきは、顔を見あわせました。
「これは、寝ぼけたのかな。」
「きっと、本当にねむっているのだよ。」
ふたりは、ふくろうのまわりを、ぐるぐるまわって、さけびました。
「勝ちはだれだー!」
ふくろうは、むにゃむにゃと、うれしそうに答えました。
「……おいなりさん、おかわり。」
おしまい
