人格権と財産権が同時に付く

執筆者:

カテゴリ:

約3分で読めます

著作権は申請しなくても発生する 第4章

無方式で付くのは、一本の権利ではありません。文化庁の著作権テキストは、著作者の権利を大きく二つに分けます。著作者人格権は精神的な利益を守る側、著作権(財産権)は財産的な利益を守る側です。

どちらも第17条のもとで、創作と同時に立ち上がります。方式を要しない、という第1章の話は、二系統の両方にかかります。申請の有無で片方だけが先に立つ、という仕組みではありません。

人格権の柱は三つです。法第18条から第20条に並びます。公表権は、まだ公表していない著作物を公衆に出すかどうかを決める権利です。氏名表示権は、実名や変名を出すか、出さないかを決める権利です。

同一性保持権は、内容や題号を意に反して改変されない権利です。精神的な傷を防ぐ側の言葉で、テキストもそのように整理します。例外の細則はありますが、三本という骨格は変わりません。

財産権の側は、利用の形ごとに権利が並びます。条文に「著作権」という一つの箱があるのではなく、複製・上演・公衆送信といった利用の都度に権利が及ぶ、とテキストは注意します。カタログの暗記はしません。

代表として法第21条の複製権があり、あらゆる著作物に共通する基本です。公衆送信権は、ネット配信のような送り方にかかる代表例です。上演や演奏など、ほかの利用形にも別の権利名が付きます。

無断でコピーする・送る、といった利用を止めたり許諾したりするのが、財産権のイメージです。許諾を得る話は財産権の側に寄ります。人格権の三本は、名前や改変や公表の決定という別の軸です。同じ創作に同時に付いても、役割は分かれます。

二つが同時に付くことの帰結は、譲渡の可否に出ます。法第59条では、著作者人格権は著作者本人にだけ属し、他人へ渡せない、と置かれます。法第61条では、著作権の全部または一部を譲り渡せる、と置かれます。権利を売ったからといって、名前の扱いも改変も自由になる、という意味ではありません。財産権の移転と、人格権の残存は切り分けて読む必要があります。

テキストも同じ対比表を置きます。人格権は著作者に専属するため譲渡できない。財産権は土地の所有権などと同様、譲渡や相続ができる。

経済的な利用の許諾と、精神的な利益の保護は、別の軸です。映画など帰属の例外の箱はありますが、二系統という骨格は変わりません。売ったあとも人格権が残る、というのが無方式のあとの意外さです。

自動発生のあとに見えるのは、終わり方の長さです。発生は瞬間でも、保護の終わりは長い。権利がいつまで続くか。原則の線は、著作者がいなくなってからも長く残る形です。

参考:e-Gov「著作権法」/文化庁「著作権テキスト」(令和8年度版)

前の章:守られるのは表現で、アイディアではない

次の章:保護は死後七十年が原則

ほかの読みもの