著作権は申請しなくても発生する 第5章
発生は瞬間でも、終わりは長いです。文化庁の著作権テキストは、著作権(財産権)の保護期間を、創作したときに始まり、原則として著作者の生存している期間に死後70年を加えた長さだ、と書きます。法第51条の原則です。
共同著作物では、最後に死亡した著作者の死後から数えます。申請の有無は、この長さの計算には入りません。無方式で立った権利が、長い線のうえで終わる、という並びです。
数え方にも型があります。法第57条は、死亡した日や公表された日、創作された日の属する年の翌年から起算する、と定めます。テキストの言い方では翌年の1月1日からです。日単位ではなく、年の切り替わりで箱を作ります。例えば手塚治虫さんの著作物は、平成元年の死去を受け、平成2年1月1日から起算して70年後の令和41年12月31日まで、と説明されています。
死亡した月日にかかわらず、その年に70を足した年の年末まで、と考えると追いやすいです。月日の細かい差より、年の箱で切る計算です。創作の瞬間に始まった権利が、長い年数の線のうえで終わる、という形になります。入口の速さと出口の遅さは、同じ権利の両面です。
起算の箱が違う例外もあります。無名・変名の著作物は、原則として公表後70年です。周知の変名は除く、という注もテキストにあります。団体名義の著作物も公表後70年が原則で、創作後70年以内に公表されなければ創作後70年になります。
映画の著作物も公表後70年が原則で、未公表の扱いは団体名義に近い型です。表にしすぎず、起算の仕方が違う箱がある、と押さえます。死後起算が原則で、公表起算が例外の並びです。誰がいつ死んだかが追いづらい名義では、公表の年を起点にします。
人格権の側は別です。一身専属のため、著作者の死亡で人格権そのものは消えます。ただし死後も、人格権の侵害となるべき行為をしてはならない、という規律が残ります。ここでの主語は財産権の長さです。
保護が切れたあとは、社会全体の共有財産として自由に使える、とテキストは制度の趣旨を置きます。青空文庫などで古い作品が読める入口も、その先にあります。個別作品の判定や相続の助言、遺言の書き方にはしません。いま作ったものは、自分の死後も長い線で続く、という事実だけを置きます。発生の速さと保護の長さは、同じ制度の両端です。
発生は申請なし。終わりは原則、死後七十年。それだけ長い権利なのに、入口に願書がない。では、文化庁にある手続の箱は何のためか。権利を「発生させる」入口ではない、という締めに続きます。
参考:e-Gov「著作権法」/文化庁「著作権テキスト」(令和8年度版)
前の章:人格権と財産権が同時に付く