著作権は申請しなくても発生する 第2章
「申請しないと権利にならない」は、特許の世界では正しいです。知的財産権のうち特許権・実用新案権・意匠権・商標権の四つを産業財産権と呼び、特許庁が所管します。INPITの説明では、これらの権利は特許庁に出願し登録されることによって、一定期間、独占的に実施できる権利になります。
願書を出し、審査を経て、登録される。そこが入口です。創作しただけでは、これらの独占権は立ちません。
何を守るかも、四つのなかで分かれます。特許は発明、実用新案は物品の形状などの考案、意匠はデザイン、商標は商品やサービスに使うマークです。文化庁テキストの一覧でも、産業財産権は出願や登録から保護期間を数える形が並びます。入口が手続である点は共通です。模倣を防ぎ産業の発展を図る、という制度目的もINPITの説明にあります。
著作権の入口は、そこではありません。文化庁の登録ページは、登録によって権利が発生する特許権や実用新案権などと異なる、と並べて書きます。著作権法上の登録制度は権利取得のためのものではない、ともあります。第1章で見た無方式は、産業財産権の入口と対にしたときにいちばんはっきりします。
文化庁の著作権テキストも同じ対比です。産業財産権などは申請や登録などの手続が必要だと置いたうえで、著作権はそうした手続を一切必要とせず、著作物が創られた時点で自動的に付与するのが国際的なルールだと書きます。権利取得のための登録制度などは禁止される、ともあります。これを無方式主義と呼びます。
禁止の根拠もテキストにあります。テキストによれば、ベルヌ条約などの国際ルールのもとで著作権は創作と同時に自動で立ち、著作権を得るための登録制度といったものは置かれません。条約本文の条文番号までは追わず、文化庁が書く要約の線までです。日本がベルヌ条約を結んだのは明治32年で、旧著作権法の制定と同じ年です。無方式は後から付け足した例外ではなく、国際ルール側の前提に近い位置にあります。
ここで混同しやすいのは、「申請しないと権利にならない」という感覚を、著作権にも当てはめてしまうことです。それは産業財産権側の入口を、著作権に誤って乗せた誤解です。発明やネーミングを守りたいなら特許庁の制度、表現そのものを守りたいなら著作権、という役割分担の入口がここにあります。
出願と登録が要る権利と、創作だけで立つ権利が並ぶ。同じ知的な成果でも、制度の入口は真逆です。入口を取り違えると、申請の有無で権利の有無を測ってしまうことになります。では、手続なしで付く権利は、いったい何に付くのか。次に見えてくるのは、付く対象の境目です。
参考:INPIT「産業財産権について教えてください。」/文化庁「著作権テキスト」(令和8年度版)/文化庁「著作権の登録手続き」
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