信号の青は青色の灯火

執筆者:

カテゴリ:

約3分で読めます

信号の青は青色の灯火 第1章

交差点で「青になった」と聞こえる語感がある。耳の地図は、すぐ青と呼ぶ。法令の地図は、そうではない。聞こえた語と、法令が置く種類名は、層そのものが違う。道路交通法第4条第4項は、信号機の表示する信号の意味その他信号機について必要な事項は政令で定める、と置く。意味も、種類も、法本文だけでは閉じない。法は枠を示し、細部は政令へ渡す。その政令の側が、道路交通法施行令第2条だ。法4条4項の信号の種類及び意味は表のとおり、と書き、上欄に種類名が並ぶ。意味の欄より先に、種類名の欄がある。人が青と呼ぶ灯火は、その表では「青色の灯火」と書かれる。耳の青と、表の青色の灯火は、同じ物差しでは重ならない。青と呼ぶ感覚と、青色の灯火と書く法令は、入口が違う。口にした青と、表に載った青色の灯火を、同じ時計で読まない。

「青色の灯火」は、道の合図を呼ぶ日常語ではない。施行令の表が置く種類名だ。「青信号」は日常の呼び方であり、表の種類名ではない。一度ひっくり返すと、聞こえた語と、上欄の語がずれる。青信号という言い方は便利でも、法令の上欄には載らない。便利な語と、種類名の語を、一語に畳まない。道路交通法第2条十四は、信号機の定義のなかに灯火により、という一行を抱える。電気により操作され、道路の交通に関し、灯火により信号を表示する装置、という枠だ。灯火により、という芯が、信号の形を支える。定義の芯は、色の俗称より先にある。黄色の灯火も、赤色の灯火も、同じ型で並ぶ。黄も赤も、〜色の灯火として表に載る、という位置だけを先に持つ。色の呼び方が揃うのは、合図の説明より手前の話だ。表は、誰がどこへ進むかより先に、灯火の名を揃える。名が先で、意味は後から付く。種類名が立ってから、意味の欄が続く。紙の語を、耳の語で上書きしない。

青色の灯火の矢印も、人の形の記号を有する青色の灯火も、表の上ではなお青の語を抱える。矢印も人型も、青の種類名の延長にある。形が変わっても、青の語は落ちない。なぜ緑に見えるのか、昭和の改定で語がどう動いたのかは、あとの地図として残す。見え方のずれと、語の履歴は、別の層だ。先に置くのは、人が青と呼ぶ灯火の種類名が「青色の灯火」である、という一段だけだ。細部の見え方と、語の履歴は、あとの地図へ回す。条文の場所は、e-Govの道路交通法と道路交通法施行令へ戻る。道交法4条4項から施行令2条の表へ降りる。上欄を開けば、青色の灯火が先に立つ。日常の青と、法令の青色の灯火を、分けて持つ。信号の青は青色の灯火だ。

参考:e-Gov法令検索「道路交通法」/e-Gov法令検索「道路交通法施行令」

次の章:かつて法令は緑と呼んでいた

ほかの読みもの