雨あがりの朝でした。男の子のたくみは赤い長ぐつをはいて、外へ出ました。道のあちこちに、大きな水たまりができています。たくみはいちばん大きな水たまりに、ぴょんと飛びこみました。ぱしゃんと水がはねて、足もとがひやっとしました。
水たまりのむこう
すると、ふしぎなことが起きました。水たまりの底がぐんぐん深くなって、たくみはすとんと落ちていったのです。気がつくと、見たことのない国に立っていました。空はさかさまで、道はすきとおっていて、木々はぜんぶ水色にゆれています。
「ここは、どこだろう」
すると、足もとから声がしました。
「ここは水たまりの国だよ」
見ると、赤い長ぐつがにこにこ笑っています。
「ぼくはきみの長ぐつ。ずっときみを、ここに連れてきたかったんだ」
水たまりの国のひみつ
長ぐつは、たくみを国じゅう案内してくれました。かえるの楽団が、水の音で音楽を奏でていて、かたつむりの郵便屋さんが、ゆっくり手紙を運んでいます。空には虹のはしごがかかっていました。
「あれは、雨がやんだときだけ出るはしごだよ」
たくみがはしごをのぼってみると、てっぺんから元の世界がのぞけて、小さな小さな、たくみの家が見えました。
「ぼくのおうちだ」
帰りの道
「そろそろ帰ろうか」と長ぐつが言いました。「お母さんが待っているよ」
たくみはうなずいて、虹のはしごをおり、水色の木々の間を通りぬけて、いちばん大きな水たまりの底へ向かいました。ぱしゃんと音がして、気がつくと、元の道に立っていました。足もとには赤い長ぐつと、水たまり。空はよく晴れています。
家に帰ると、お母さんが迎えに出てきました。
「おかえり、たくみ。どこへ行っていたの」
「えっとね。水たまりの国に」
お母さんはにっこり笑いました。
「それは、すてきな旅だったわね」
その日から、たくみは雨あがりの朝がいちばん好きになりました。長ぐつの中で、小さな水の音がくすくす笑っているような気がするのでした。
おしまい
